JASRAC
あなたが主催する演奏会、あるいはリサイタルを開催した、と仮想しましょう。すると、翌日、演奏の余韻からか「打ち上げ」の「二日酔い」のどちらかはわかりませんが、醒めやらぬ頭をかかえつつ郵便受けをのぞいてみると、たぶん、ズシリと重い封筒が届いているのをみつけるでしょう。それは、いわずとしれた日本音楽著作権協会JASRACからの音楽著作権使用料の申請書類にほかなりません。演奏会を「人知れず」「秘密裏」に開くことなんて、どだい無理な話です。準備期間中には新聞社の文芸部、関係雑誌の案内欄、フリーペーパー、ミニコミ誌など、ありとあらゆるところに通知を出して、カネ・太鼓入りで演奏会の宣伝をしたでしょう? 敵はこれらに掲載された情報を網羅された組織力ですべからく収集し、「演奏会の主催者・責任者は誰であるか?」を、こちらに確認を求めてくることなどは決してせず、掌握した情報を照合・分析し正しい判断を下したのち、演奏会の翌日あたりをねらって「必殺の刺客」をあやまたず放ってきます。このタイミング、何度経験してもまさに「絶妙」という他はなく、まことに「いい仕事」です。いやむしろ、天晴れです。
現在では音楽著作権使用料の課金システムは簡素になってきましたが、前世紀は非常に煩瑣でした。そも、ある作曲家の著作権が有効か消滅しているかもわかりにくいのです。原則的に死後50年で著作権は消滅するのですが、その作曲家の国籍が属す国家が戦争の当事国になった場合は、交戦状態にあった期間は著作権の時効が停止しますから、その期間分延長されたり、国によっては著作権は死後70年間保護されるなど、大変に複雑な要素が関わってきます。
「これは差別じゃないかい?」と思えるものに料金区分に「純」と「軽」がありました。クラシック音楽作曲家の著作使用料は「軽」音楽作曲家の2倍です。どうも、よくわからないのですがJohn WILLIAMS(STAR WARSの作曲者)は「軽」でした。
申請書を書く際にも、特別なテクニックがありました。以前は著作権使用料というものは「5分間につきいくら」でしたから、たとえば演奏時間16分45秒の曲でしたら「14分58秒」に過少申告すると、これで使用料は4分の3に減額できます。が演奏時間18分を超えるものを15分以下に書き換える図々しさは、ついに持ち合わせませんでした。
申請書類を書き上げ、返送しますとJASRACが審査し、著作権が消滅した曲の部分には【PD】のスタンプを押し、使用料の発生するものにはその料金を記入した書類と合計金額分の振り込み用紙が送り返されてきますから、その料金を振り込んで一件落着です。まぁ、原則的にはこの手続きは演奏会を開く前に申請し「音楽著作物利用許諾証」を発行してもらわないかぎり演奏してはならないのがタテマエなのですが、前述の「5分間につきいくら」の時代でしたから「申請する際は楽曲演奏時間の精密なる記載を期す」ゆえに「あと出し」が慣行でした。
今、巷で問題視されているのは、JASRACは、そうして徴収した音楽著作権使用料を、はたして正統な受取人に正しく還元しているか?なのですが、そんなこたァ、わたしごとき者の知ったこっちゃありません「法律は法律」として墨守するまでです。
それよりも、このインターネット時代、ネットで流す音楽にもこの著作権使用料はかかります。使用する曲の著作権が有効か?消滅か?は申請書を出せばむこうが調べてくれるわけではなく、こちらがJASRACの運営するJ-WIDというサイトで予め調査したのちに申請しなくてはなりませんが、このJ-WIDなるシロモノが複雑怪奇でして申請曲のJASRAC登録番号を割り出すには、よほどの幸運に恵まれないかぎり、まず不可能です。そこでこのごろは一計を案じ、カマトトぶって「こんど、わたしのブログで××って人が書いた○○っていう曲をパソコンで作って、みんなに聞かせたいな、と思っているんですが、それには音楽著作権料というものを払わなくてはいけないよ、と学校の先生が心配しています。本当ですか?どうか教えてください。」なんてメールを送信します、すると敵はご丁寧にも「当該曲はJASRAC登録番号第X■●△という当法人の管理作品であるによって、なんたらかんたら・・・・」と返信してきますから、なんなく登録番号をひきだす術を心得るにいたりました。











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