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JASRAC part3.

Oxford021

編曲権・演奏権

前回まで2回、演奏会で著作権が有効な楽曲を演奏、あるいはネットで楽曲を配信する場合のJASRACとの関わりを書いてきましたが、実は私のように著作権が、まだ生きている曲を編曲する場合、JASRACとの契約以外に、もう一つクリアしなければならない問題があります。それが編曲権です。これを保有あるいは主張する作曲家と、それを放棄している作曲家がいます。ケースバイケースで、これは出版社に問い合わせてみないかぎりわかりません。例えば、ジャック・イベールの場合は御遺族の意志が堅く、申請してもオリジナルの編曲は認めてくれせん。また、ベンジャミン・ブリテンの楽曲でしたら版権の所有者に交渉し、編曲が許可され、その編曲作品の演奏を承認してもらい、正式な契約書を取り交わせば、オリジナル作品の編曲や他楽器での演奏が可能になります。

以前、音楽学校でオーケストラの指揮をしていたときの話です。この学校のオーケストラの編成は(弦5部)+(木管5重奏×2)の編成でした。金管が必要なら本番だけトラを呼んでくる手もあるんですが、こういう編成の管弦楽曲は、まず存在しませんから、編成に合わせた編曲作品で授業を進めることになります。ある年、弦楽科の先生と話し合い「来年はブリテンのシンプルシンフォニーを演奏会でやろう」と一決、前年の秋から準備に入りました。調べてみるとこの曲の場合は「がんじがらめ」に保護されていて、著作権・版権を所有しているのはオックスフォード大学。そこに編曲と演奏を承認してもらわねばなりません。とはいっても、慣れない英文で鉛筆の先を舐め舐め ”I am・・・・・, I'd like to ・・・”なんて小学生のようなレターやメールを綴る必要は全くなく、そこはシンプルシンフォニーの楽譜を日本に輸入している総代理店が、この手のエージェントを引き受けてくれてOKがおりました。年内に編曲を脱稿し、きたない手書きのスコアをドサリと助手に渡すとコンピュータ出力でパート譜におこしてくれる段取りです。(毎年、これで助手の冬休みと春休みが、ほとんどツブれますから大いに恨まれました)

新年度になり音楽科の研究室(とは名ばかりで、こんな部屋でいかなる研究も為されたことはありません、講師溜まりというか、弁当を使ったり、コーヒー飲んだりゲームに興じたりするトコです)に顔を出すと、学部長が青い顔をして「先生、これは大変なことになりました。新年度が始まってからは新しい予算は計上できません」と、なにやら紙束をふりかざしながら震えています。なんのことやら、さっぱりわからず、その紙束を見せてもらうと、これが届いたばかりのオックスフォード大学との英文本契約書でした。
「********氏の手になる本曲の編曲を承認する・・・」
「当該編曲作品を貴学**月**日に開催予定の定期演奏会において一回限り公開演奏するのを承認する・・・」
「その演奏に際してはJASRACを通じて規定の音楽著作権使用料を支払う・・・・」
「後記する当オックスフォード大学よりの許諾文の省略内容を一字違わず必要最小部数のコピーにとどめた総譜・パート譜すべてに記載すべく・・・」
長々と続き、学部長を震撼させたのが最後の項目でした。
「・・・・・・以上の契約金として貴学はオックスフォード大学出版部に対して英貨2万5千ポンドを遅滞なく支払うものとする。」
その項目を読んだトタンに場数を踏んだわたくしは「ハハァ~ 間違えたな!」とすぐにわかりましたが、学部長は「先生、先生!2万5千ポンドといえば、今日の相場で600万円以上ですよ、とてもそんな予算を今からは・・」と、今度は新聞の外為欄を振りかざして青くなっています。さっそくエージェントの楽譜輸入会社に電話すると、案の定「エエッ! 2万5千ポンドになってましたか!?  スビバッせーん!!! それ、2万5千円の打ち間違いです。」

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Comments

インターネット時代になってもお国ぶりが発揮されます。大手楽譜出版社の新刊ニュースレター配信のメールフォームを記入した、その後の対応です。

米=まずニュースレターなどは発行していません。

独・瑞西=いまや英国の楽譜出版社の多くがドイツ出版社のグループ傘下に入っています、たいてい確認メール続いて、当方の名入りで購読申し込みに対する丁重なお礼のメールが届きます。配信も確実です。

仏=「あいよ、了解」のメール、配信は思いついたときに送られてくるようで、毎号は届きません。が、隔世の感があると申しますか、感心なことに、このごろは、さすがに英仏の2カ国語で編集されています。

伊=ウンともスンとも返事がありません、意外なのが、そのあとでして、着実に配信され、なんと!美しく分厚いニュースカタログまで毎号、必ず航空便で届けてくれます(無料で) ま、たまに間違えてイタリア語版が送られてくるのが御愛敬です。(これ、閉口します)

Posted by: PINK MOZART. | Friday, 15 June 2007 03:14

風邪は、おかげさんで治りました。
遅ればせながら、
ご心配ありがとうございます!

> まま「ナシのつぶて」が多く、こちらもハナから諦めてかかることにしています。

これもまた、「ならでは」の話ですね。
やはり、ラテン気質からくるものなのか。
まあ、海外とのやりとり(電話は除く)は、
日本人同士のようにサクサクいかなくても当たり前。
むしろ我々日本人の方が、
せっかちなだけかも知れませんね。

Posted by: Site Cafe Rias | Wednesday, 13 June 2007 20:44

お風邪の具合はいかがですかな?

英米それとドイツ法人との交渉は楽です、レスポンスが確実に返ってきますから、遅々とではあるにせよ、あるいは契約不成立になるにせよ、進展というものがありますが、相手国がフランスの場合は、これはコトですよ~ まま「ナシのつぶて」が多く、こちらもハナから諦めてかかることにしています。こうした法務関係は確実にクリアしておかないと後々、自分の首を絞めることになりますから、今では「必要不可欠」と割り切っています。

でもね~B・ブリテンのシンプルシンフォニーをDTMでMP3にしてオックスフォード大はおろかJASRACの承認も得ないでネット配信する人もいるのが現状です、たぶん確信犯などではなく、無知から生じたことなのでしょうが、こちらがヒヤヒヤします。肝が太いというか・・・オラ、知ラね~ぞ~

Posted by: PINK MOZART. | Wednesday, 13 June 2007 00:29

編曲権というものもあるんですね。
初めて知りました。
勉強になります。
しかし、本当にある意味、
がんじがらめなんですね、
音楽著作権って・・・。

それにしても、
ゼロの数(数字)を間違えたのでなく、
通貨の方(単位)を間違えるとは。
これもある意味、すごいですね。
結局、事なきを得たようで、何よりでしたが。

Posted by: Site Cafe Rias | Tuesday, 12 June 2007 22:27

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