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BRITISH MONARCHY英国王室公式サイト

大英帝國ファン《part2》

【承前】そのころの英国は労働党キャラハン政権の終末期で高福祉政策の負担から経済は不調をきわめ、いわゆる「英国病」も膏肓に入っていました。経費節減で洗車を全くされていない英国国鉄(現在は分割民営化)の窓は汚れで車窓の用を為さないほど曇っていましたし、ヨーロッパ大陸では見かけない鉄道に向けた看板広告がやたらと目につき、それらにはすべてTake Courage!=元気を出せ!/勇気を奮い起こせ!【注】の絵の無い文字プロパガンダが大書されていて、なにやら戦時の暗雲がたちこめているようでした。
それでもパリに較べて、ずいぶんと落ち着いた雰囲気のあるロンドンの街はなかなかに活発で街の人々も親切で朗らか、ま、これは初級以前のフランス語で「大苦戦」とはちがい英語が通じるせいもありますが、とても親しみやすい感じがしました。

もっとも、英国経済が「どん底」であることは即ち当時 THE HARDEST MONEYに成り上がっていた[YEN HOLDER]にとっては絶佳となります。諸事万端「目の玉が引っ込む」ほど安い物価に驚愕の連続でした。
空港であてがわれた南ケンシントン地区中級ホテルの料金が豊かな英国式朝食込みで5000円くらい。「目抜きの通り」であるREGENTストリートの真ん中にある壮麗なCafe Royalや下端にある今はなきモダンで豪華なレストランHunting Lodgeなども世情を反映し、いつもガラ空き、予約なしでも食事ができ、しかも、サーヴィスや厨房の質は厳格に堅持されていましたから王侯貴族のように傅かれシャンパーニュ正餐を摂っても日本の物価水準からするとゼロ一つ、付け忘れているような会計。
愛読していたシャーロック・ホームズに頻繁に出てくるので是非とも一度やってみたかった「一等車のコンパートメントに乗り込む」はロンドン・ポーツマス往復で千数百円。英国人は先客のいるコンパートメントには決して入りませんから定員6人の一等コンパートメントに常に一人ずつの乗客を乗せて運行していました。

この時期、悪名高い通貨12進法制はとっくに10進法に改まっていましたが、まだ旧制度のシリング硬貨が流通している時代でもありました。 とある、鄙びた村のYe Old Tea House(yeはtheの古語です)という茶屋でスコーンや焼き菓子にたっぷりと生クリームが添えられたアフタヌーン・ティーを喫したことがあります。
勘定を訊ねると"eighty pense, Sir." 80ペンスは当時の換算レートで140円ほどでしたから、ずいぶん安いと感動しポケットの小銭一掃を兼ね95ペンスを置いて去ろうとすると、女主人が顔をサッと紅潮させ(「顔がサッと紅潮する」が英国人の一大特徴です)駆け寄ってきました。あら、チップが足りなかったのかな?と後悔しましたが、そうではなく置いた硬貨を手にしながら「あなたは外国の方だからお金の種類がわからないのでしょう?いいですか、この2シリング貨はこの5ペンス貨2枚と同じ価値です、あなたの置いた5ペンスと18シリングはつまり合計95ペンスということになり…」と滔々たる通貨制度の講釈がはじまりました。アフタヌーン・ティーの代価"eighty pense"は「聞きマツガイ」で、なんと!"eighteen pense"=邦貨32円でした。【つづく】

【注】後年、英国人にこの話をすると檄爆笑=COURAGEはビールの銘柄
   「カレッジ・ビールを飲め!」のCM看板でした。

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