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Cofe_royal

大英帝國ファン《part4》

【承前】さて、昼は中華料理かインド料理で安直にすませるにしても「唯食史観者」の夜は「それなり」の食卓を求め渉猟します。

ピカデリー・サーカスにほど近いリーゼント街に四囲を圧するような門構えの今はなき大料亭Cafe Royalがありました、通りすがりに豪華で威厳充分なファサードに度肝を抜かれ足を止め眺めていましたが、「ここで夕食をとるのはどうだらふ? まさか、飛び込みじゃダメだよね?」としばし黙考(一人旅ですからあたりまえですが)したのち「ママよ」と近づくと、おそらく、その間抜けな姿を中から観察していたのでしょう、重厚なドアがスッと中に引き開けられ、すんなりとレセプションに招き入れられました。コートや手荷物を預けて食堂に案内されると、のちにJacqueline BISSET主演、美食コメディ映画"Who's Killing The Greatest Chef of Europe"のロケに使われたほどに荘厳・壮麗な内部に更に驚かされました。
後年、海外に出ると「その街のナンバーワン・レストラン征服」が習いとなりましたが、ついぞこのCafe Royal正餐室に匹敵する豪華な食堂には出会えません。

現在では長足の進歩をとげましたが、ちょっと昔の日本に於ける「高級な洋食」「ホテルのレストラン」などは、たとえ「フランス料理」を標榜していても基本はフランスから直接学んだものや取り入れたものではなく、あくまで亜流フランス料理にすぎず、実はすべてかつての日英同盟期直前に近代調理法の創始者である偉大なシェフ、オーギュスト・エスコフィエが確立した大英帝国帝都旅籠典範に準拠していたフシがあります。はじめてパリのミシュラン三つ星レストランに上がった時に「日本のフランス料理」と隔絶した超絶技巧と、あまりの調理法の先進性・素材の多様性に絶句したものですが、これが海峡を渡りますと一変し、素材こそ多彩ではありますが、調理法は東京の「ヨコメシ」をウンと高級にしたような直線上にある故に非常に理解し易く、また、おしなべてすばらしい味でした。
たとえば、現在はモダン・キュイズィーヌに変貌しましたが高名な海鮮料亭Scott'sの当時名物料理であったグラタンは、とびっきり上品なソースでたっぷりの伊勢エビと蟹を焼き上げますから味こそ「月スポ」なれど日本の「街の洋食屋さん」マカロニグラタンと見た目はさほど変わりませんし、Simpson's in-the-Strandの銀器で食すCurry on Ricesなども大傑作ではありますが、なんとなく「ロイヤル・ホストのジャワカレー」の本家本元を感じさせ、いかに英国が日本に与えた調理法(とくにカレーは)の影響が多大であることが実感できました。

Cafe Royalのサーヴィスもまた「完璧」の一語でした。
当時、続々と廃船になってゆく豪華客船勤務から陸に上がったイタリア系のヴェテランと思しき燕尾服の給仕達は威厳を醸し出しつつも(ギャルソンが「全員腰の低いパヴァロッティ」みたいなレストランを御想像あれ)典雅かつ華麗に振る舞い、食事中は「お客様が王様である」気分を存分に味わえせてもらいました。そして「お勘定」はファースト・コース、ワイン込みでup to5000円。     まさにグルメ天国でした。【つづく】

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