SUITE ANGLOPHILE_RONDE ANGLAISE.
大英帝國ファン《part5》
【承前】ロンドンから鉄道とバスで3時間ほどはなれた自動車博物館を訪れたとき、おおまかなアクセスを電話で聞き出し、いきなり「初見」で臨んだ報いとして英国国鉄を降りたまでは順調でしたが、そのあとはツッカエヒッカエになりました。ぽつねんと田舎町のバス停で待っていると向かい側の歩道をディア・ハンティング帽(シャーロック・ホームズが愛用していたアレです)を被った、いかにも退役陸軍将校風の立派な紳士が歩いてきました。
遠方からワタクシの姿を視界に入れていたはず、にもかかわらず真向かいに達するや、やおら「お、これは!」という小芝居を打ち、直角に道路を横切り朗々たる正調英語で(あたりまえですが)「遠来の少年よ、いずこへ向かわれるか?」 帽子に手をかけての唐突な御下問であります。
「博物館まで」と答えると、道程を訊ねられ「それは、正しい選択ではあるが経由地点を変更すると早く着くやも」と助言をくださり「御安着を祈りますぞ」とニッコリ笑って去ってゆきました。
御親切に従い急遽変更した次の経由地からのバスは1時間に一本、折悪くも出たばかりでした。
ロンドンもパリも実はロシアのハバロフスクよりもっと北、サハリン(樺太)の真ん中あたりの高緯度帯に位置していますから一月のイングランドも午後3時、そろそろ暮れ始めました。
通りかかったタクシーを合図すると(日本と違って腕を水平に伸ばします)運転していたのはなかなかに上品な御婦人でした。
窓越しに目的地を告げると「ま~大変、すぐ戻ってくるからココで待ってて。いま定期契約している幼稚園児を迎えに行くところなの、いいこと?待っててよ、タクシーはこの町でこれ一台だからね」
20分ほどバス停で待っていると引き返してきて「さ、さ、急がなくちゃ」このあと博物館に着くまでの約半時間、気のいいミセス・モーガンは(いえナニ、「次に来るときはロンドンから電話で予約をしてね」と名刺をくれたのです)「のべつ幕なし」郷土の歴史、見るべきポイントなどをしゃべり続けました。
とっぷりと暮れた4時半に博物館に着くと入場券売り場の貴婦人風係員は一生懸命、お札の勘定しながら「あら、冬は4時に閉めちゃうの。どちらからいらしたの?」 ホテルのお気に入りバー・テンドレスには「パリから」と真っ赤なホントを言い続けたクセに、ここでは大仰に「極東の日本から」と真っ白なウソを告くと「お気の毒に、いいわ、私はあと30分ここにいるからその間に見ていらっしゃい」と入場料も受け取らず通用口から博物館に入れてくれました。そして子供の頃からあこがれていた国宝級のクラシックカーを警備員もいない展示館で独り占めにできたのはハンプシャー州BEAULIEUにある『国立自動車博物館』
でのおハナシです。












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